Tenji P-Fab:Japanese Braille マニュアル

日本語の文章を点字に変換し、Blender の3Dモデルの表面に点として載せる拡張機能(Extension)

tenji_pfab-0.1.1.zip をダウンロード(19.7 MB)

バージョン 0.1.1 / 対応: Blender 5.2 以降(動作確認は 5.2.1 LTS・macOS のみ) / ライセンス: 配布版(この zip)は GPL-3.0-or-later、ソースコードは MIT
SHA-256: ade6fe59160100e764cf5770e248da3c4f8d73a010c79760b0687db468452d4c

1. できること

Tenji P-Fab:Japanese Braille は、入力した日本語を日本語点字(6点点字)に変換し、Blender で選択した3Dモデルの表面に、点(半球状のドット)として載せる拡張機能です。 点字ラベルや触って分かる案内表示の、3Dプリント用モデルを作る用途を想定しています。

板のモデルの表面に、3行の点字が半球状の点として並んでいる。
板(80×40×6 mm)に「こんにちは、点字ラベルです。」を載せた例(真上から見たところ)。

2. インストール

2.1 必要なもの

2.2 zip ファイルからインストールする

  1. 上の「tenji_pfab-0.1.1.zip をダウンロード」で、zip ファイルを保存します(解凍はしません)。
  2. Blender を起動し、メニューの Edit → Preferences を開きます。
  3. 左の一覧から Get Extensions を選びます。
  4. 画面右上の ▽(下向き矢印)のメニューから Install from Disk… を選び、保存した zip ファイルを指定します。
  5. インストールすると、拡張機能の一覧に Tenji P-Fab:Japanese Braille が現れます。チェックが入っていれば有効です(入っていなければ、チェックを入れます)。
  6. 3Dビューの上にマウスを置いて N キーを押すと、右側にサイドバーが開きます。タブの中に Tenji があれば、準備完了です。
「Get Extensions」の画面でオンラインへの接続を求められた場合は、許可しなくても、ディスクからのインストールは行えます。

2.3 更新とアンインストール

3. 使い方(基本の流れ)

パネルの一番上に、次にやることが案内として表示されます。

  1. 点字を載せたいモデルを選択する。メッシュのオブジェクトを、クリックで選びます。選択していないうちは、「選択モデルに点字作成」ボタンは灰色で、押せません。
    何も選択していない状態のパネル。「① モデルを選択してください」と表示され、「選択モデルに点字作成」ボタンが灰色になっている。 モデルを選択した状態のパネル。「② 面を正面に向けて押す」と表示され、「選択モデルに点字作成」ボタンが押せる状態になっている。
    左: 何も選択していない状態。右: モデルを選択した状態。
  2. 点字を載せたい面を、正面に向ける。3Dビューを回して、載せたい面をまっすぐ見る向きにします。画面の中央が、点字を置く場所になります。 (上から載せるなら、テンキーの 7 で真上からの視点にします。)
  3. 「選択モデルに点字作成」を押す。選択中のモデルが対象になり、いま見ている向きに合わせて、点字を載せる位置と向きが決まります。 画面の右が読む方向、下が次の行、奥の面に向かって点が載ります。
  4. テキストを入力する。「テキスト」の欄に日本語を入力し、「更新」を押すと、点字がモデルの上に作られます。
    テキストを入力した状態のパネル。語の一覧に「こんにちは」「、」「点字」「ラベル」「です」「。」が並び、それぞれの読みと後ろの空白が表示されている。下に「55/55点 / 3行 / 最大入射角 0.0°」と表示されている。
    入力後のパネル。語ごとに読みと「後ろの空白」が一覧され、下に生成の結果が出る。
  5. 調整する。モデルの上の点字を見ながら、テキストや空白、1行のセル数などを変えます(変えるたびに、自動で作り直されます)。 読みが違う語は、一覧の「読み」の欄を直接書き換えます。位置を変えたいときは、3Dビューを動かして「選択モデルに点字作成」を押し直します。
  6. 確かめる。「検証(逆読み)」を押すと、生成した点から点字を読み戻し、期待どおりかを確認できます(結果はパネルに出ます)。
  7. 仕上げる。点字は、通常のメッシュ(Tenji_Dots)として作られます。モデルと一体にしたり、STL などで書き出したりするのは、Blender の通常の操作で行ってください(このアドオンは書き出し機能を持ちません)。 続けて別の点字を作る場合は、先に「新規点字」を押します(複数のラベルを作る)。
ご注意: 「新規点字」を押さずにテキストを変えると、いまある点字は新しい内容で上書きされます。残したい点字は、先に「新規点字」で確定してください。

4. パネルの説明

サイドバーの Tenji タブにある「点字」パネルの項目です。

パネルの項目
項目説明
選択モデルに点字作成選択中のメッシュを対象にして、いま見ている向き・画面中央の位置に、点字を載せる枠を作ります。押し直すと、いまの点字がその場所へ移ります。メッシュを選択しているときだけ押せます。
テキスト点字にする日本語。入力したら「更新」を押してください。改行は段落の区切りになり、2マス空けて始まります。
語の一覧テキストを語に区切った結果。左から「元の語」「読み」「後ろの空白」。読みは書き換えられます。「後ろの空白」は、自動 / なし / 1マス / 2マスから選びます(詳しくは)。
読みを作り直すテキストから語の一覧を作り直します。手で直した読みと空白の指定は、すべてリセットされます。
1行のセル数1行に並べる点字のマス(セル)の数。
折り返し「点字の規則で折り返す」(既定)または「1行のセル数で並べる」(詳しくは)。
配置「左揃え」: 点字ブロックの左上を、枠の位置に合わせます。「中央揃え」: ブロックの中心を、枠の位置に合わせます(行数や文字数が変わっても中心が動きません)。「選択モデルに点字作成」を押すと「中央揃え」になります。
空白を自動で入れるオン(既定): 点字の規則に従って、分かち書きの空白を自動で入れます。オフ: テキストに自分で入れた空白だけを使います。
更新いまのテキストと設定で、分かち書き・点字への変換・モデル上の点の生成をやり直します。
自動で更新オフ(既定)。オンにすると、テキストや設定を変えるたびに、点を作り直します(枠やモデルを動かしたときは「更新」を押してください)。重いモデルでは、オフのまま使うことをおすすめします。
検証(逆読み)生成した点のメッシュから点字を読み戻して、期待どおりか確認します。一致すれば「OK」と点字が、点が欠けているなどで違えば「不一致」と表示されます。
新規点字いまの点字を確定して(通常のメッシュ Tenji_Label として残して)、テキストを空にし、新しい点字を作り始めます。
詳細(対象・枠)対象のモデルと、点字を載せる枠(Empty、名前は Tenji_Frame)を、直接指定する欄。通常は「選択モデルに点字作成」が自動で設定するので、触る必要はありません。
サイズ点字の寸法の設定(下の表)。
「詳細(対象・枠)」と「サイズ」を開いた状態のパネル。サイズには、点間2.40、セル間6.00、行間10.00、点径1.50、点高さ0.30、埋め込み0.20、出力サイズ0.00、警告角度45.00の各項目がある。
「詳細(対象・枠)」と「サイズ」を開いたところ。どちらも、見出しをクリックして開閉できます。
「サイズ」の項目(単位はすべて mm)
項目既定値説明
点間2.41つのセルの中で、隣り合う点の中心間の距離。
セル間6.0隣り合うセルの、左上の点どうしの距離。
行間10.0隣り合う行の、上の点どうしの距離。
点径1.5点(半球)の底の直径。
点高さ0.3点の高さ。触ったときの感触を考えて、低めの値にしてあります。印刷条件や好みで調整してください。
埋め込み0.2点を、モデルの表面より下へ潜らせる深さ。曲面で、点とモデルの間にすき間ができないようにします。
出力サイズ0(無効)対象モデルの最長辺を、印刷したときに何 mm にするか(詳しくは)。
警告角度45°モデルの表面が点字の向きに対してこの角度より傾いている点を、「急斜面」として数えて警告します。

寸法の既定値(点間 2.4 mm、セル間 6.0 mm)は、日本の点字の標準的な寸法です。点径・高さ・行間・埋め込みは、このアドオンでの目安の値です。

5. 空白(分かち書き)と読みの調整

点字では、語の区切りに1マスの空白を入れます(分かち書き)。このアドオンは、形態素解析で語の区切りを決めて、点字の規則に従って空白を自動で入れますが、 解析は完全ではなく、また、モデルの大きさによって、空白を入れる・入れないで見た目が大きく変わります。次の方法で調整できます。

5.1 テキストに空白を直接入力する(基本)

テキストの好きな位置に空白を入力すると、入力した数のマスの空白になります(規則で入る自動の空白には足されません)。空白を入れなかった場所は、規則で自動に決まります。

空白を入れない(自動) 点字で作るクマの人形
「で」の後ろに空白2つ、「作る」の後ろに1つ 点字で 作る クマの人形

5.2 空白を自動で入れない

「空白を自動で入れる」をオフにすると、テキストに入力した空白だけが使われます。短いラベルで、空白を自分で全部決めたいときに向いています。

「空白を自動で入れる」をオフ + 空白を2か所 点字で 作る クマの人形
「空白を自動で入れる」をオフ + 空白なし 点字で作るクマの人形

5.3 語ごとに指定する

語の一覧の右の列(「後ろの空白」)で、その語の後ろの空白を、自動 / なし / 1マス / 2マスから選べます。テキストへの入力より優先されます。

5.4 読みを直す

漢字の読みは辞書(Janome)で決めるため、間違うことがあります。語の一覧の「読み」の欄を直接書き換えると、その読みで点字になります (ひらがなで入力します)。読みの欄に空白を入れると、語の途中でも区切れます。テキストを編集しても、直した読みは、同じ語に引き継がれます。

「点字の規則」では、助詞(「は」→「わ」、「へ」→「え」)や長音(「とうきょう」→「とーきょー」)の読み替えも、自動で行われます。

6. 折り返し

1行のセル数に収まらない文章は、複数の行に分けます。分け方は2通りから選べます(既定は「点字の規則で折り返す」)。

点字の規則で折り返す(1行8セル) 点字で作るクマの人形です


1行のセル数で並べる(1行8セル) 点字で作るクマの人形です


7. サイズと3Dプリント

7.1 単位の考え方

「サイズ」の寸法は mm で指定します。Blender のシーンの単位に応じて、次のように換算されます。

例: 最長辺が 2.0(単位なし)のモデルに、出力サイズ 100 を指定すると、印刷後の長さが 100 mm になる前提で、点字の点間が 2.4 mm 相当の大きさで作られます。モデルの大きさを変えたときは、「更新」を押して作り直してください。

7.2 点の高さ

点高さの既定値は 0.3 mm です。触ったときの感触を考えて、低めにしてあります。プリンターの積層ピッチや、使う人の好みに合わせて調整してください。

実際の3Dプリントでの仕上がり(点の高さの出方・触り心地)は、これからの確認事項です。印刷条件によっては、点が十分に立ち上がらないことがあります。試し刷りで確認することをお勧めします。

7.3 モデルと一体にする・書き出す

点は、モデルの表面に 0.2 mm 埋め込まれた状態で作られます。結合(Ctrl+J)やブーリアン演算で、モデルと一体にしてから、STL などで書き出してください。書き出しは Blender の標準機能を使います。

8. 曲面に載せる

点は、視点の向きに沿って、モデルの表面に載ります(各点の位置を、表面に射影します)。点の根元は、その場所の表面に合わせて傾きます。

円柱の曲面に、点字の点が表面に沿って並んでいる。
円柱(半径 30 mm)の曲面に載せた例。

9. 複数のラベルを作る

点字を作っている間は、1つの「作業中の点字」(Tenji_Dots)だけを更新します。別のラベルを作りたいときは、「新規点字」を押します。

  1. 1つ目の点字ができたら、「新規点字」を押します。いまの点字は、通常のメッシュ Tenji_Label として残り、テキストが空になります。
  2. 3Dビューを動かして、次に載せる場所を中央にし、「選択モデルに点字作成」を押します(または、枠の Empty を動かします)。
  3. テキストを入力し、「更新」を押します。
板の上側に「ようこそ」、下側に「ありがとう」の点字が、2つ並んでいる。
「ようこそ」を作って「新規点字」で確定し、位置を変えて「ありがとう」を作った例。

確定した Tenji_Label は通常のメッシュなので、あとから、このアドオンでテキストを編集し直すことはできません。やり直すときは、オブジェクトを削除して、作り直してください。

10. 対応している点字

点字の例(上の入力をこのアドオンで変換した結果)
種類入力点字備考
かなこんにちは
ありがとう
ぱぴぷぺぽ半濁音
濁音・拗音・促音・長音学校濁音・促音(「がっこー」)
きょうと拗音
東京長音(「とーきょー」)
ラーメン
助詞の読み私は学校へ行く「は」→「わ」、「へ」→「え」
数字(数符)100円
3個
3らしい数字の後ろのア行・ラ行はつなぎ符
英字(外字符・大文字符)ABC
NHKの番組英字の連続は大文字符を2つ
X線英字の後ろの仮名はつなぎ符
DOS/Vスラッシュ
句読点・疑問符・感嘆符はい、そうです。
本当ですか?そうです。
やった!
東大寺・春日大社中点
括弧「こんにちは」かぎ括弧
先生は、「みんなの前で話すときは『伝えよう』が大切です。」と言った。入れ子(ふたえかぎ)
(注)かっこ
〈こんにちは。〉第2かぎ
記号20%引きパーセント
Q&Aアンド
*11は短縮番号アスタリスク
「#点字」ナンバー
5個@200円アット
範囲・矢印・数字の伏せ字10時~12時波線
東京8時→長野10時矢印
20××年数字の伏せ字
内線1××4番
点線・棒線そして…。点線
のれんに腕押し――糠に釘棒線

規則の根拠は、文部科学省「点字表記法」(第6章第3節)です。表の点字は、このアドオンでの変換結果です。

対応していないもの

自動の変換(読み・分かち書き)は、完全ではありません。公共の施設の案内など、正確さが求められる点字は、点訳の経験のある方による確認をお勧めします。

11. 困ったときは

症状確認すること
「選択モデルに点字作成」が押せない3Dビューで、メッシュのオブジェクトを選択してください(点字のオブジェクト Tenji_*、空のオブジェクト(Empty)、カメラなどでは押せません)。
点字が作られないパネルの案内(①②③)を確認してください。テキストが空のとき、また、枠をまだ作っていないときは、何も作られません。入力したあと、「更新」を押しましたか。
「モデルに当たらない点」と出る点字ブロックが、モデルの面からはみ出しています。文章を短くする、1行のセル数を減らす、行間やセル間を小さくする、載せる位置をずらす、のいずれかで調整してください。
点字が裏返っている・向きが違う点字は、「選択モデルに点字作成」を押したときの視点に合わせて、画面の右へ向かって読む向きに作られます。載せたい面を正面から見て押し直してください。
読みが違う語の一覧の「読み」の欄を、ひらがなで直接書き換えてください。
語の途中に空白が入る(例: 「がっ こう」)辞書による語の区切りが不自然になっています。語の一覧で、その語の「後ろの空白」を「なし」にしてください。ひらがなだけの文章で起こりやすいです。
空白の入り方を変えたい5. 空白(分かち書き)と読みの調整を参照してください。
点のまわりがちらついたり、ざらついて見えるBlender の3Dビューの描画の精度の問題で、データには影響しません。サイドバーの View タブで、Clip Start を大きく(例: 10〜30)、Clip End を小さく(例: 500)すると改善します。ミリメートル単位のシーンで、モデルから離れて見ているときに起こりやすい現象です。
逆読みが「不一致」になる点が一部欠けていることが主な原因です(「モデルに当たらない点」を確認してください)。確定したあとに、モデルや点字のメッシュを手で動かした場合も、一致しなくなります。
操作が重い点の数が非常に多い場合や、ポリゴン数の多いモデルでは、更新に時間がかかることがあります。「自動で更新」はオフのまま、必要なときだけ「更新」を押してください。

12. 制限事項

13. ライセンス・第三者ソフトウェア

ソースコード・不具合の報告・ご意見: https://github.com/ssssrabbit/tenjipfab(blender/ ディレクトリ)。